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電源が入らない・繋がらない NASからデータを取り出す


電源が入らなくなったり、繋がらなくなってしまったNAS(ネットワークHDD)からデータを復旧する方法について紹介します。

電源が入らない・繋がらない原因

NAS(ネットワークHDD)の電源が入らなかったりアクセスできないといった場合、ほとんどがNASのシステム障害や本体の故障が原因です。保存したデータやHDD自体が破損している可能性は意外と少ないので、たいていの場合データの復旧は可能です
このような障害が発生したら、一刻も早く故障したNASからデータを救出する事を優先しましょう

具体的には、NASからHDDを取り出し、パソコンに直接接続することでデータを取り出すことができます。

データ救出の流れ

データ復旧の流れについて大まかに説明します。

1、故障したNASからHDDを取り出す
2、取り出したHDDをパソコンに接続
3、Ubuntuを立ち上げる
4、HDDからデータを取り出す

1、故障したNASからHDDを取り出す

今回、IODATAのLAN DISK(HDL2-A2.0)を例に説明していきます。

NASは大きく分けてHDDが1台搭載されているシングルドライブモデルと、複数のHDDが搭載されているマルチドライブモデルがあります。

LAN DISK(HDL2-A2.0)はマルチドライブモデルで、HDDの交換が容易にできる設計になっていることが多いです。
一方、シングルドライブの場合は本体カバーがねじで固定されていることが多く、ドライバーなどの工具が必要になります。

HDDの取り出し手順

まず、NASの電源ボタンを長押ししてシステムをシャットダウンします。

システムのシャットダウンを確認したら、アダプターを取り外します。

LAN DISK(HDL2-A2.0)後ろのつまみを押しながら上部カバーを外します。

NASからHDDを引き抜きます。この時HDDに衝撃を与えないように慎重に作業しましょう。
ちなみに、マルチドライブモデルのHDDは”ドライブ1”、”ドライブ2”と、ナンバーが割り振られています。間違わないようにHDDにマジックなどでナンバーを書き込むと良いでしょう。

※RAID1で構成されたNASは2台のうち、いずれか片方のHDDからデータを復元できます。

2、取り出したHDDをパソコンに接続

取り出したHDDはS-ATA規格のHDDが採用されていると思いますが、初期のNASはIDE接続のHDDが採用されていることがあります。それぞれの接続規格に合わせてパソコンに接続します。

接続方法は、S-ATA⇔USB変換ケーブルを使って接続しても良いですし、デスクトップ型パソコンがあれば直接マザーボードにS-ATA接続してしまうのが一番です。

USB変換ケーブルでHDDを接続する方法

S-ATAケーブルを使ってパソコン接続する方法

3、Ubuntuを立ち上げる

NASから取り出したHDDは、フォーマット形式が特殊なためWinsowsでは認識しません。認識するにはUbuntuが必要です。
Ubuntuを使うにはDVD-Rにイメージを書き込み、DVDブート※1でパソコンを起動する必要があります。(※1 DVDのデータを使ってパソコンを立ち上げること)

Ubuntuの書き込みと、起動方法についてはこちら↓で詳しく解説しているので参考にしてください。

 

4、HDDからデータを取り出す

Ubuntuが起動したら接続したNASのHDDからデータを取り出します。
HDDは自動的にマウントされるので、デスクトップ左側のガジェットにHDDが表示されるはずです。

一方で、RAIDで構築したHDDは認識するものの、そのままアクセスすることができません。
そこで、コマンドラインを使って手動でマウントする必要があります。

RAID1のHDDをマウントしてデータ復旧

RAID1のHDDを片方だけ接続してみたところ、HDDの認識はするものの「システムで予約済み」としてアクセスができません。

RAID1はミラーリングですが、片側のHDDだけでは一筋縄では認識しなかったようです。
とはいうものの、mdadmを利用すれば片方のRAID1ディスクだけでマウントすることが可能です。

1、ターミナルを起動する

Ubuntu左上のボタンをクリックし、入力ボックスに「ta」と入力。
アプリケーションの中から「端末」をクリックします。

2、GPartedの起動

GPartedとはWindowsの「ディスクの管理」と同じような機能です。
端末を起動したら、まず「sudo su」と入力してEnterをクリック。
これで管理者権限になります。

次に「gparted」と入力→Enterをクリックします。

GPartedウィンドウが表示されます。
右上のプルダウンメニューから、NASから取り出したHDDを選択します。(HDD容量を手掛かりに見つけます。)
選択するとパーティションの一覧が表示されます。パーティションはNASのシステムやデータ領域などに分かれているので、6つ程のパーティションに分かれているのが普通です。
この中で一番大きな容量をもつパーティションが、ユーザーがデータ保持に利用しているパーティション領域という事になります。
この例では「/dev/sda6」がデータ保持領域です。このパーティション名「/dev/sda6」をメモしておきましょう。

3、mdadmのインストール

RAIDを制御・管理する”mdadm”というプログラムをインストールします。
新しく端末を起動し、「sudo su」で管理者になります。
「apt install mdadm」と入力し、ソフトウェアを取り込みます。

4、RAIDデータのマウント

mdadmをインストールしたらRAIDを仮想デバイスとして認識させます。
「mdadm –assemple –run /dev/md0 /dev/sda6」と入力します。
最後の”/dev/sda6”はGPartedで調べたパーティション名で置き換えてください

仮想デバイスとしてRAID1を構築したのでLinuxにマウントします。このあたりの操作はWindowsユーザーには理解しにくい部分かと思います。
まずはマウントするフォルダを適当な名前”/mnt/dev”で作成します。
「mkdir /mnt/dev」と入力します。

作成したフォルダ”/mnt/dev”にRAIDデータをマウントします。誤操作を回避するため、読み込み専用としてマウントします。
「mount -o ro /dev/md0 /mnt/dev」と入力します。

5、NASのデータにアクセス

以上の操作でNASのデータにアクセスできるようなっているはずです。
左のメニューからファイルアイコンをクリックしましょう。

「コンピューター」を選択し、「mnt」→「dev」とフォルダをクリックしていきます。

NASのデータ領域にアクセスできました。それぞれのフォルダの中に保存したデータが入っているはずなので確認してみましょう。

データの確認が出来たら適当なストレージを用意してコピーしましょう。
以上でNASデータの復旧は完了です。

RAID0、RAID5のHDDをマウントしてデータ復旧

RAID1は片方のHDDを使ってマウントすることができますが、RAID0やRAID5といったRAID1以外のRAIDは複数のHDDを接続して仮想デバイスを構築する必要があります。

ここではRAID0を例に複数のHDDから仮想デバイスを構築する方法について説明します。
複数のHDDを接続するので、USBではなくS-ATA接続の方がコストがかかりません。

HDDを接続するときは、NASのHDD番号順にマザーボードのS-ATA端子に接続すると都合が良いです。
マザーボードのS-ATAにはマニュアルを見るとこのように番号が振られています。

出典;MAXIMUS VI GENEマザーボードマニュアル

HDDを接続したらUbuntuを使ってアクセスします。

1、ターミナルを起動する

ターミナルの起動は前述のRAID1と同様の手順なので割愛します。

2、GPartedの起動

GPartedの起動方法と操作方法は前述のRAID1と同様の手順なので割愛します。

GPartedで確認したところ、「/dev/sdb」と「/dev/sdc」がRAID0のドライブと判明。
また、「/dev/sdb6」と「/dev/sdc6」がNASのデータ領域のパーティションであることが判明しました。

3、mdadmのインストール

mdadmのインストールは前述のRAID1と同様の手順なので割愛します。

4、RAIDデータのマウント

mdadmをインストールしたらRAIDを仮想デバイスとして認識させます。
「mdadm –assemple /dev/md/md /dev/sd[bc]6」と入力します。

/dev/sd[bc]6は「/dev/sdb6」と「/dev/sdc6」を一つにまとめるという意味です。
各々の環境によって変わってきますからGPartedで確認したパーティション名を記入してください。

仮想デバイスとしてRAID0を構築したのでLinuxにマウントします。
マウントするフォルダを適当な名前”/mnt/raid0”として作成します。
「mkdir /mnt/raid0」と入力します。

作成したフォルダ”/mnt/raid0”にRAIDデータをマウントします。誤操作を回避するため、読み込み専用としてマウントします。
「mount -o ro /dev/md/md /mnt/raid0」と入力します。

5、NASのデータにアクセス

マウントしたRAIDデータの確認方法も前述のRAID1と同様の手順なので割愛します。

「コンピューター」を選択し、「mnt」→「raid0」とフォルダをクリックすればマウントしたRAID0の中身が確認できるはずです。

データの確認が出来たら適当なストレージを用意してコピーしましょう。
以上でNASデータの復旧は完了です。

 

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データ復元が出来ない時は? 「データ復旧成功の鍵」参照



One Response to 電源が入らない・繋がらない NASからデータを取り出す

  1. 近江公人 on 2019年9月21日 at 05:53

    落雷被害によりエラーが発生し新しいNASを用意しましたので、参考になりました。
    試してみます。
    細かい説明で助かります。

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