2017/10/02

熱伝導率90W/mkのCPU冷却シートを試してみたら以外な結果に

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日本製を謳うVertical-Graphite Proを試してみました。熱伝導率90W/mkのCPU冷却シートです。
値段は2000円以上するにも関わらず、レビューを見ると結構高評価。CPUグリスより冷えたという書き込みが結構あります。

あまり期待はしていませんでしたが、”お試し”ということで、使ってみることにしました。

Vertical-Graphite Proレビュー

モノが届いたので早速レビューします。
「日本製!」と書かれていますが、日本製だから高品質という時代でもありません。しっかりと製品を見極める必要があります。

開封

これが2000円以上する冷却シートです。(PETシートに挟まれている状態)
焼き海苔そっくり!
粘着性は皆無。PETシートで梱包されていますが、開封すると”パラッ”と落ちるほど。
シートに弾力製は無く、見た目は本当に焼き海苔のようです。

取扱の注意書きが入っています。
”製品の再利用は不可”と書かれています。
「どうせ再利用できるだろう」と思っていました。が、実際に使ってみると剥がすときに破れてしまい、何度も使える製品でないことが判明。再利用は期待しないほうが良いです。

冷却シートの取り付け

Core2Duoパソコンでチェックしてみます。「CPU放熱グリスの劣化はウソ?真相究明」の記事を書いたとき状態だったのでレビューには丁度いい実験機です。
条件が同じなのでグリスとの比較もできます。

まずは塗布されたCPUグリスをよ~く拭き取ります。

放熱シートをCPUに載せてみました。
丁度よい大きさです。
シートには粘着性がほとんどないので、ズレないように純正クーラーをそっと取り付けます。

冷却テスト

検証方法は前回のCPUグリスの真相究明のときと同じです。
CPU Stres」を使ってCPU使用率100%の負荷をかけ、10分後のCPU温度を測定することで評価します。

室温は25.9℃
CPUファン回転数は100%固定

測定結果

測定結果は最大68℃という結果。
全然冷えないというわけではありませんが、COOLER MASTERの冷却ファンに付属していたグリスは同条件で67℃まで冷えたことを考えるとこの結果はよくありません。
なにせ、熱伝導率90W/mkなのですから。

ちなみに、一桁小さい9.0W/mkのシルバーグリスは同条件で65℃まで冷えています。
詳細は「CPU放熱グリスの劣化はウソ?真相究明」参照のこと

測定値
コア#0 最大68℃
コア#1 最大66℃

原因調査

さすが熱伝導率90W/mkのシートなのでこれは何か変です。

原因は厚さか?

Vertical-Graphite Proは厚さが0.25mmあるので、極端に薄いシートではありません。冷却性能は厚さに比例するので、薄塗りの冷却グリスに負けたのでしょうか?

以前検証した結果によると、確かに冷却グリスは0.05mmほどの厚さになることが分かっています。
しかし、仮にVertical-Graphite Proの厚さが5倍あったとしても熱伝導率は10高いので、冷却性能が劣るとは考えられません。

冷却シートの状態を確認する

データシートでは原因がわからなかったので、CPUクーラーを取り外して冷却シートの状態を見ることにしました。

取り外してみたら原因が一発で判明。
写真では見にくいですが、シートの左右には圧着痕があるのに中央部分には圧着された形跡がありません。

シート圧着部分の拡大図
左右に”三日月状”の圧着痕が確認できます。CPUが強く密着していたので表面が潰れています。
中央部分は表面の質感が変わっていないので、密着していない事が確認できました。

CPUのヒートスプレッダにも、同様の三日月状の圧着痕が確認できます。

なぜ密着しなかったのか?

最初、中央部分に空気が閉じ込められたため、隙間が空いてしまったと思いました。
しかし、圧着痕の上下には隙間があるので空気が閉じ込められてしまったわけではありません。

状況から判断して、冷却ファン、CPU、冷却シートのいずれかの面精度が悪いことが原因と推測できます。

原因はCPUのヒートスプレッダ

原因はすぐにわかりました。
CPUの上にアルコールを垂らし、ガラス板を乗せてみるとご覧の通り。
写真の白っぽく見える部分がアルコールです。つまり、上下の部分に隙間になっています。

更に数分後、アルコールが気化すると左右の部分だけが密着し、中央部分が空洞になりました。
シートの圧着痕と傾向が一致したので、CPUのヒートスプレッダが歪んでいることが原因と断定できます。
どうやらCPUを固定バーの”押え”が強すぎてヒートスプレッダを歪ませているようなのです。
試しにCPUの固定バーを外して見ると、平面になりました。

改善策

CPUの固定バーを調整するわけにも行きませんから、冷却シートを加工して改善しようと思います。

端の部分が高いので真中部分だけを使ってみたらどうでしょうか?
もともとCPUコアはヒートスプレッダの中央付近にあるので、ヒートスプレッダの端を密着するより中心部分を密着したほうが効率が良いはず。

ということで、一旦剥がそうとしたらペリッと切れてしまいました。
一見、粘着性がないのですが圧着した部分は張り付いてしまうようです。

すでにボロボロ。
説明書の通り、繰り返し使うことはできなさそう・・・。

とりあえず、中心部分が密着するように適当にカットして乗せてみました。

冷却効果が劇的に改善

これは成功です。最大62℃なので十分な効果が確認できました。やはり中央部分の”浮き”が原因だったようです。
やはり熱伝導率90W/mkは伊達ではなかったようです。

測定値
室温は26.1℃
CPUファン回転数は100%固定
コア#0 最大62℃
コア#1 最大60℃

まとめ

今回、熱伝導シートを試したわけですが、やはりシートと言う特性上、CPUやヒートシンクに凹凸があるとうまく吸収できず、浮いてしまうという事が判明。
シートを乗せるだけなので簡単に作業できると思いきや、意外なところに落とし穴がありました。

ただ、レビューの口コミは高評価なので、もしかしたら最新のCPUはもっと平面が出ているのかもしれません。(テストに使ったCPUは10年前のCore2Duo)

とは言うものの、高価なシートなので、使う場合はCPUやヒートシンクが平面になっているか確認したほうが良さそうです。
ガラス板とアルコールがあれば簡単に確認することができます。
ガラス板は100均のフォトスタンドのガラスを流用。作り方は「ガラスの切り方」で説明
ぜひお試しください。

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