2017/09/26 2017/09/27

CPU放熱グリスの劣化はウソ?真相究明

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冷却グリスは劣化すると言われていますが、実際のところどうなのでしょうか?

実はあるサイトで「CPUグリスを外したら粉になっていた場合、グリスの性能は変わってしまうと考えなければならない」という旨の記事を見ました。

そのサイトによると、「グリスの流動成分が揮発した結果」として話がまとめられていましが、それは粉になる要因であって冷却性能が低下したという根拠ではありません。

実際に性能が変わってしまったという客観的な根拠や検証がなされていないのです。

確かに使用年数とともにグリスが固化するので客観的にグリスの”性質”は変化しています。これは私も経験済みなので理解できます。しかし、検証もせずグリスの性質変化と放熱性能を同義とし、「放熱性能は変わってしまうと考えなければならない」と断言するのは論点がズレているように感じました。

本当にグリスは劣化するのか?

実は私も客観的なデータを持っていませんでしたし、数値化したデータを見たことがなかったので検証してみることにしました。

検証に使ったパソコンは2009年にCPUグリスを交換したCore2Duoパソコン。
このパソコンは1年前までメインパソコンとして現役だったパソコンです。

塗布してから7年以上前のグリスなので今回の検証にはぴったりです。
倉庫で埃をかぶっていたパーツを寄せ集め、とりあえず動くようにしました。

検証方法

この状態で「CPU Stres」を使ってCPU使用率100%の負荷をかけ、10分後のCPU温度を測定することで評価します。

室温は26℃±0.4℃
CPUファン回転数は100%固定

7年ものCPUグリスの状態は?

負荷テストの結果

負荷テストの結果は以下の通り。最大値が67℃になりました。
特にオーバークロックしていない状態なのですが、CPU使用率が100の状態で67℃は十分に冷えています。実用上まったく問題にならないレベルです。

室温26.0℃
コア#0 最大67℃
コア#1 最大65℃

グリスの状態をチェック

CPUクーラーを取り外し、グリスの状態をチェックします。
ご覧の通り完全に固まっていてポロポロと剥がれます。手で差触れてみるとパウダー状の粉になるほどなので、WEBサイトの情報的には完全に経年劣化した状態です。(今回の比較テストには最適な状態です。)

このグリスはインテル純正のCPUグリスではなく、「COOLER MASTER」のCPUクーラー付属のグリスを流用したものです。物持ちがいいので当時のグリスが工具箱に入っていました。
あと1回分入っているのでCPUグリスを塗り直してテストすることにしました。

塗り直した冷却グリスは?

負荷テストの結果

測定結果がこれ。最大値が67℃と、7年間使用したグリスとまったく同じデータになってしまいました。しかもコア#0とコア#1の温度とも同じ温度です。
これは私も驚きです。さすがに何らかの差が出るだろうと考えていたので、ここまで一致するとは想像もしていませんでした。

室温26.2℃
コア#0 最大67℃
コア#1 最大65℃

グリスの状態をチェック

CPUクーラーを取り外し、グリスの状態をチェックします。
塗布したばかりのグリスなので粘性があります。写真からもグリスの粘性が伝わると思います。

新品のグリスを使って追検証

結果があまりにも出来過ぎなので、他のCPU放熱グリスでも同様の測定をしてみました。

使用する放熱グリスは熱伝導率に定評のあるシルバーグリスと容量たっぷりのアイネックス GS-04です。

  • シルバーグリス
    熱伝導率9.0W/m・K
  • アイネックス GS-04
    熱伝導率3.8W/m・K

シルバーグリス

アイネックス 熱伝導グリス 大容量タイプ GS-04

シルバーグリスの検証結果

シルバーグリスは熱伝導率9.0W/m・Kと、市販のグリスの中では高い伝導率で、「COOLER MASTER」と比較して2℃ほど冷却効果が改善しています。

室温26.0℃
コア#0 最大65℃
コア#1 最大64℃

グリスの状態をチェック

シルバーグリスは粘性が低く、伸びの良いグリスです。
ダイ全体にグリスが広がっています。

アイネックス GS-04の検証結果

GS-04は熱伝導率3.8W/m・Kと、標準的な熱伝導率で、「COOLER MASTER」と比較して1℃ほどコア温度が上昇しました。

室温26.0℃
コア#0 最大68℃
コア#1 最大67℃

追検証の結果は概ね熱伝導率と温度上昇の傾向が同じなので、信頼性のある実験値であること判断しました。

結論

結局、CPU放熱グリスの経年劣化による性能劣化は見られませんでいた。

確かに7年使用したグリスの状態は揮発成分が抜けて固まり、粉状になっていました。しかし、それによって放熱性が低下したかというと、まったく変化していません

なぜ、グリスの状態が変化したにもかかわらず、性能が維持されたのでしょうか?
これを考察するために、グリスの揮発成分を調べました。
信越化学工業 放熱グリスWW-7762-1.5Gの製品情報によると、放熱グリスはシリコーンオイルを基油に金属酸化物などを配合したものであること書かれています。
つまり、CPUグリスの固化は揮発成分であるシリコーンオイルの揮発であることがわかります。

では揮発するシリコーンオイルの熱伝導率を調べてみるとグレードによる違いがあるにせよ、概ね0.1~0.16W/m・K程度ということがわかりました。
放熱グリスの熱伝導率が4~9W/m・Kということを考えると、シリコーンオイルは熱伝導性に寄与せず、ほとんどが金属酸化物などの配合材によるものです。

シリコーンオイルが揮発する過程を考えると、シリコンオイルの層が全て空気に置き換わることは考えにくく、シリコンオイルの揮発とともに金属酸化物の隙間が小さくなり、熱伝導率は逆に向上するすると思われます。ただし、熱伝導率の低い空気の層もゼロにはならないため、プラス・マイナスで打ち消し合い、変化しなかったのではないかと結論に至りました。
(空気の熱伝導率は0.03W/m・K程度)

グリスの配合材もシリカ粉末(二酸化ケイ素)や金属酸化物なので物質的に安定しており、もともとが酸化物なので物質的に経年劣化するはずがありません。

一方で、グリスを塗り替えたら温度が下がったという情報もあります。
しかし、このような情報の多くが、リテールクーラーに塗布済みのグリスを異なる市販品に塗り替えた場合の情報であり、単純にグリスの性能の差である可能性が否定できません。更にCPUに負荷をかける方法や室温も明記されていません。不確定要素が多すぎて、情報として信用できるものではないでしょう。

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