繊細なハードディスクの秘密

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ハードディスクの不思議な話

ハードディスクは壊れやすい?


皆さんが良く使っているハードディスク。毎分5千回転〜1万回転もの高速で円盤が回転し、ディスクとアクセスヘッド(磁気ヘッド)の隙間僅か10ナノメートルしかありません。

10ナノメートルと言われても実感が無いので分かり難いのですが磁気ヘッド(1mmと仮定)をジェット機(全長70mと仮定)に例えると
1mm:0.00001mm = x:70000mm(70m)
0.00001x = 70000
x = 0.7
から分かる様に、地上1mm弱の高度を維持しながらをジェット機が飛行している位すごい事なのです。

現実にジェット機を1mmの高度で飛行させる事は可能なのでしょうか?この事実を知っている方なら一度は疑問に思う事だと思います。

ですが、これにはからくりがあります。

ヒントは”揚力”と”レイノルズ係数”。

ハードディスクの磁気ヘッドは単に10ナノメートルの距離を維持するようには出来ていません。磁気ヘッドはディスクが静止状態では完全に接触してしまいます。(回転が静止状態の時は磁気ヘッドはディスク上から退避させている)
ディスクが高速で回転する事によって、ディスク周りに空気の流れが生じ、結果的に磁気ヘッドがあたかも飛行機の様に浮かび上がると言う訳です。(下記模式図参照)これが磁気ヘッドがディスクに接触しない一つの理由
磁気ヘッドの浮力


もうひとつの理由がレイノルズ係数。実はこれが一番のネックだと思います。
レイノルズ係数とは、おおざっぱに言うと流体の粘りと慣性力(大きさ)に関する係数。と言っても難しいのですが、ようは物質が小さくなればなるほど周りの流体の粘りが増すと言う事を表しています。

物質が小さくなればなるほど粘性が粘りが増すのですから1mmの磁気ヘッド周りの層はかなりの粘性を持っている事になります。

直径10cmの円盤状を毎分10000回転する磁気ヘッドの時速は2*3.14*0.05*10000*60 = 188400m/h ≒ 190km/h
大気の動粘性係数を0.15*10-4とするとレイノルズ数は約2.9*10-5となる。

これを先ほどのジャンボジェット機に当てはめると
2.9*10-5 = (70m*{1000*1000/3600}(ジャンボジェットの飛行速度を1000km/hとした場合))/x

x ≒ 6.7*105となる。(xは粘度係数)

この粘度係数は例えるなら室温で放置した水飴より大きいので、ほぼ固体と考えて良いくらいです。
ハードディスクの磁気ヘッドは、例えるなら硬い水飴の上をジャンボジェット機が滑る様に”移動”しているようなものなのです。

はじめ、ジャンボジェットが1mmの高度を飛行すると言われた時は信じられないような事でしたが、この様に考えると少しは納得するのではないでしょうか?

そもそもジャンボジェットが1mmの高度を維持した所でちょっとした振動で地面(ディスク)と接触してしまいます。起動中のハードディスクをゆっくり手で動かしても、まず故障する事はありません。
それは水飴の様な硬い流体が磁気ヘッドを保護しているからだったのです。

ですが、ジャンボジェット機並みの大きさに”1mm程度の膜”では大きな衝撃には耐えられません。やはりハードディスクは慎重に扱った方がよいと言う事になりますね(^^;)。

※上記の計算はかなり大雑把に計算した物です。しかも計算の間違いがあるかもしれないので、もし間違いに気が付いたかたは御一報下さると幸いです・・・。
あと、この原理は私が理解している範囲での説明なので根本的に間違っている可能性もあります。より正確な情報を持っている方がいらしたら合わせてご連絡お願いします。

余談

ちなみにレイノルズ数に関して余談です。
以前は「クマバチ」と言う昆虫は航空力学上飛べない昆虫とされていました
科学者が飛べる原理を解明出来ていない以上”飛べるはずもない”と言う事は間違ってはいません。ですが、これを通り越して、「クマバチは、飛べると信じているから飛べるのだ」という説が一般的になっていたようです。wiki参照
この話を中学生の時に聞いた時は「そんなバカな」と思いました。飛べるはずもない物が飛んでいる以上、それを証明出来ない航空力学の方が間違っている。そう言う思考に至らない事が問題だと思ったからです。(飛行原理はレイノルズ数によって解明)

この様な思考は何も大昔の話では無くて、今現在も”疑似科学”として広く浸透しています。
一見、科学的と思わせるような”一面”だけを取り上げて無知な一般市民を信じ込ませるやり方は”科学宗教”と言って過言でないと思っていますし、ほとんどの人はこの科学宗教にどっぷり浸かっていると思っています。

良く分からない”事象”が現実に起きている事が客観的に認知されている以上、良く分かっていない(反論する根拠が無い)方に問題があると考えるべきだと思います。
心当たりあるのではないでしょうか?


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